なお現代では、棚田や果樹園のような、人々の営みと地形が拮抗してつくられてきた関係が崩れつつあります。現代の経済原理では傾斜地を活かして建てるよりも、できる限りその敷地内を平らに切り欠いて、法の許す限り大きく建物をつくるという事例が数多く存在します。土地はできる限り平らな方が不動産としては高値で捌きやすいですし、床面積が大きい方が賃料等をより多く稼げるからです。

私たちの姿勢はそれらに対するアンチテーゼとも言えるかもしれません。


 

図と地のあいだ Between figure and ground


地形と人々のあいだに生まれる営みに興味があります。


かつて人々は、各々が住まう土地の地形と上手に折り合いをつけて暮らしてきました。


例えば緩やかな傾斜地では平らな場所を比較的広く確保しやすいため、地形に沿って少しづつ段状に平場をつくり、棚田が形成され、米や麦を植えていきました。平野地でも同じようなことが言えるでしょう。



一方、小山や谷間のような急傾斜地では平場を確保しにくいため、可能な限り少しづつ段々畑をつくりました。そこには主に果樹や茶などが植えられ、傾斜が急であるがゆえに根元までしっかりと日光が行き渡っていきます。


 

Philosophy

「長崎のカステラ研究所(2023年竣工予定)」では、山手から海手に約2mほど緩やかな傾斜のある地形と盛土されたフラットな敷地の関係から見いだされる人々の集う場をつくりたいと考えています。

 

「基壇地形の竪穴(2020年竣工予定)」では、この土地は本来1.2mほど低く、国道の開発によって道路側のレベルに合わせられた歴史がありました。その2つのレベルを紡ぐように1.2mの「竪穴」をつくり、レベル差から生じる人々の活動を生み出そうとしています。

 

これらは地形と農業的な営みの関係の一端ですが、人々は地形に抗うことなく、その場の持つポテンシャルを的確に見定めて、土地の恵みを最大限活かしてきた歴史があり、その痕跡が現在の営みや風景の形成に繋がっています。


建築もそうありたいと思っています。


例えば「基壇地形の改修(2019年竣工)」では、元々その場にあった基壇地形をそのままの形状で内部化することで、地形と人々の関係を見直し、本来その地形が持っていた人々の活動場としてのポテンシャルを最大化することを考えています。

 

図(figure)= 建築

地(ground)= 地形


とすると、私たちは図と地のあり方を適切に見定め、かつての棚田や果樹園のような、「図と地のあいだ」に生まれる場をつくっていきたいと考えています。

 

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