あたご保育園

長崎県長崎市 保育園 2016年竣工

写真 中村絵 (特記以外全て)

構造設計:荒木美香/佐藤淳構造設計事務所

設備設計:シード設計社 照明計画:LIGHT・PLAN

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敷地は長崎県長崎市。中心街から山手にのぼった、西側に市街地を見下ろす急な斜面地。周辺は複雑な地形に沿って開発された住宅地となっており、立体的な街路が入り組んだ街並みが広がっている。


要望は「子供たちがどれだけ遊んでも遊び尽くせないくらい、多様な保育園」。施主の保育への姿勢があらわれた、シンプルで共感できるコンセプトであった。

そこで、敷地周辺の多様で立体的な、心躍る魅力的な空間を建築化しようと考えた。街の豊かさを抽出してできた建築は、この立体地形の街に暮らす子供たちにとって、より自然でなじみ深い生活の器となるに違いない。


もともと棚田として造成された名残のある段々状の敷地は、人工と自然の中間の、独特で立体的な魅力が感じられた。これをこのまま、なるべく壊さずに、ダイレクトに建築空間に活かそうと考えた。地面がそのまま立ち上がったような、地形そのもののような空間になるといい。


まず複雑なコンタラインを正確に調査し、地面の形状を整理した。そこへ、そのコンタラインをなぞるようにして平面形状を決定し、最小限の造成と擁壁によって敷地を整えた。そして、擁壁と直交方向にリブ状の壁面を配置し、擁壁を支えながらゆるやかに空間を仕切る。最後に、擁壁の高さや向きに従ってできた様々な形の壁面に屋根をかけると、必然的に複雑な形の空間ができあがる。

地形から合理的に立ち上がった空間に、後から当てはめるように、使い方を考えていった。


結果的に、大小さまざまな階段がうねりながら立体的にいきわたり、地形に定義された、周辺の街路のような空間となった。そこで子供たちは我々が想像もつかない空間を見出し、自由に生活することだろう。より街や自然に寄り添うことで、子供の想像力の器となりえるような多様な建築をめざした。

長崎特有の複雑な傾斜のある敷地。以前の棚田の名残がある人工と自然の間のような地形。

地形(コンターライン)にそって地形を整理する。

地形に当てはめるように平面を計画する。最小限の造成による床と擁壁をつくる。

壁と梁が一体化したリブ状の構造で擁壁を支える。短冊上に分割された、眺望へ向かう空間。

屋根を架ける。屋根の折れ方の違いが空間の大小、屋上園庭など、様々な居場所を生む。

中央の大階段に軽快な鉄骨造で屋根を架ける。長崎の階段の風景から連続する、外部的な明るい場所とする。