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長崎県大村市 オフィス・イノベーションスペース

2022年竣工  写真:YASHIRO PHOTO OFFICE

構造設計:円酒構造設計 設備設計:シード設計社 照明計画:杉尾篤照明設計事務所

サイン:氏デザイン 家具:WAAK 施工:黒木建設 木工事:大匠建設

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■最終案に至るまでの様々な検討

クライアントの企業が創立70周年を迎え、かつ社長が代替わりした節目となるタイミングで新たな一歩を踏み出すような場所をつくりたい、という要望からこのプロジェクトはスタートした。これまでの歴史に敬意を表しつつ、次世代へ向けて力強いもの、そしてそれは地域にも愛されるものにしたいということであった。実際に地域住民との関係は良好で、道行く誰もがこの企業のことをよく知っている。それらを建築に置き換えて想像すると、強くシンボリックなものでありつつも、人々を柔らかくおおらかに受け入れてくれるようなものが相応しいように思えた。

この建築は平面でみるとシンプルな矩形である。20名規模のオフィススペースと最大30名規模の多目的スペースを左右に配し、それらを分節するようにT字状のコアを設けた形を取っている。その全体に105×300の木梁を南京玉すだれ状に架けた。屋根高さを敷地奥側では水平に設定し、そこから前面道路に向かってT字平面を包み込むように下ろしていく形を取っている。一本一本は直線材だが、その変異を結んでいくと曲面のような屋根形状が立ち上がる。この木梁をささえる柱は前面ガラスのマリオン(55×150)と吹抜の境界線上(55×55)にあり、梁はその直上に屋根形状に沿った形で屋根内に内包しており、木梁を上から吊る形を取っている。いずれも鉄骨材としてスケールを落として存在感を希薄にし、木梁の存在だけをダイレクトに感じられるようにしている。木梁はすべて県内産の杉材であり、屋根面の全てを覆っているためこれ自体が高い断熱性能を有している。また屋外側には4m片持ちで突出しており、エントランスへの雨掛りを防ぐとともに日射制御にも寄与している。

105×300という材木のスケールは身体感覚としては大きいはずだが、立ち上がったものをみるととても軽快で浮遊感がある。このオフィスを利用する人々だけでなく周囲の環境までをおおらかに包み込みながらも、次世代へ向けた力強いアイコンにもなりうる施設である。