敷地は南島原市南有馬町。南東側に有明海を臨み、対岸の天草諸島まで連続しているような棚田の頂点に敷地がある。

初めて敷地に立った瞬間、ただただ感動するような風景だった。明らかに南東側に開放性があり、朝日がとても美しい。還暦間近のご夫婦は見慣れた風景だと笑っていらっしゃったが、見慣れすぎていてこの素晴らしい財産に自覚がないようであった。そして既存の住宅にはそのような眺望が無い。

このご夫婦や共に住まう祖母に日常からこの財産の豊かさに触れてもらいたいと共に、クライアントであり、普段東京・シンガポール・奄美大島など国内外を駆け回っている娘夫婦が心安らげる場所として、この素晴らしい風景を潤沢に享受できるような住まいが相応しいだろうと思った。

同時に、奥さまの経営する予約制美容室を併設すること、極力バリアフリーであること、エアコンやクーラーを使わないで暮らせること（そのためには南東側の日射熱に対して何らかのケアが必要である）等が要望された。